近江の国 釈迦山 百済寺より
待ちに待ちました僧坊酒の到着です。
- 百済寺樽 特別純米 玉栄
・使用米 滋賀県産玉栄 100%使用
・精米度 60%
・アルコール度 16%
・酵母 蔵内保存株
・日本酒度 +3.5 ・酸度1.8
・鈴鹿山系伏流水使用
紅葉の名所として有名な滋賀県 百済寺 (天台宗の寺院として平安時代~室町時代にかけて繁栄)。
織田信長が生涯で唯一の勅願寺と定めた寺として、また清酒の起源「僧坊酒」を醸造していた事でも知られています。
僧坊酒は平安時代から江戸時代に至るまで、大寺院で醸造された日本酒の総称。高品質の酒として高い評価を受けていました。
百済寺樽は飛鳥時代の推古14年(606)に聖徳太子が創建した釈迦山 百済寺で醸造されていた僧坊酒で、室町時代には幕府や朝廷にも献上された銘酒だった。
しかし天正元年(1573)、信長は敵対勢力とも縁のあった百済寺をひどく憎んでしまい、百済寺の全域を焼討ちし、この時に失われたものは百済寺に留まらず、延々と伝えられてきた僧坊酒である「百済寺樽」の醸造技術がこの時に数多の僧坊とともに消し去られてしまった。
百済寺はその後、江戸時代になり徳川幕府の力によって再建。重要文化財に指定されている今の本堂は、慶安3年(1650)に再建されたものである。最盛期の規模までの再興には至らなかったものの、百済寺は今現在も相当の寺域を誇っている。
ちなみに、伏見の銘酒 月桂冠の創業は寛永14年(1637)、富翁の創業は明暦3年(1657)、神聖の創業は延宝5年(1677)と言われている。百済寺再建の時期とほぼ重なっていることがわかる。
兵庫県伊丹市出身の比嘉彩夏(ひがあやか)さんがこの「僧坊酒」を復活させようと百済寺の近くに移り住み”幻の銘酒「百済寺樽復活プロジェクト」”を立ち上げ、近隣農家や、池田町の喜多酒造が協力。困難を乗り越え、444年ぶりに「百済寺樽」が復活しました。
この酒は日本酒の最高峰である大吟醸と同じ、750kg仕込みという小仕込みで贅沢に仕込まれました。醸造元である「喜楽長」喜多酒造の本気を感じます。
立香は青りんごや白ブドウを思わせる瑞々しいフルーツの香り、新緑のような爽やかな香り。
含み香は青りんごやクレープフルーツのフレッシュな甘い香り。
口当たりはとてもスムース、角が無く程よい熟成感もある。非常に丁寧に仕込まれた事がよくわかります。味わいは米由来で骨太の力強い旨味を感じる。更に奥に潜んでいた心地よい渋味や少しの苦味がキリっとした切れを生んでいる。
後口のキレも素晴らしく、また余韻も適度に長くまとまりの良い印象となっている。火入酒ならではの落ち着きがあるが全体的にしっかりしたコクと、フレッシュ感あるしっかりした酸があるので今後も良い熟成も楽しみ。
冷酒からぬる燗程度まで玉栄らしい個性が楽しめる温度帯だと思います。
(左:比嘉さん、右:百済寺 濱中住職)
(百済寺町農家 藤田さん)
(文政三年創業 喜多酒造)