【日本酒塾】濱川商店

◎旨し酒を醸す蔵元のご紹介(たか田酒の会開催蔵元)
※は私的感想です。

・濱川商店   高知県  代表銘柄「美丈夫」

高知県の東部、太平洋に面した安芸郡田野町はかつて、上流域から集まる木材の集積地として栄えていました。美しい森林から生まれる豊かな水。明治37年、回船問屋を営んでいた二代目浜川金太郎は、このやわらかな水を生かして酒造りを始め、「浜乃鶴」と名付けました。
時代とともに、酒造りを取り巻く環境は大きく変わってきました。今でいう普通酒が全盛の中、大量生産や激しい価格競争…、小さな蔵には厳しい時代がやってきます。五代目として浜川が蔵に入ったのは、そんなころです。
高知県の中ではいち早く純米酒造りに取り組み、良質な酒を追い求めてきました。それでも、お客さまと日本酒の間に大きな溝ができているように感じました。このままで酒蔵に未来はあるのか。希望はないんじゃないかー。
試行錯誤する中で、たどりついた答えは単純なものでした。
「とにかく、うまい酒が作りたい」。その為に出来ることはたくさんありました。
蔵の上流に位置する安芸郡北川村や馬路村は森林が村の9割以上を占めています。
高知県の中でも特に降雨量の多いところでも、馬路村の「千本山」は杉の日本三大美林としても知られています。その山々から下流の大地へと伝わってきた奈半利川の伏流水を、地下から汲み上げ、美丈夫の仕込みに使っています。
水の特徴を挙げるとすれば、超がつくほどの軟水。体にすーっとしみ通ります。美丈夫が求める酒造りに欠かすことのできない水です。

先代社長や蔵人の反対を押し切って吟醸酒造りを始めました。資金も、設備も、正直、心許ないものでした。ただ、自分が飲みたいと思う酒を造りたい。その一心でした。応援してくださる酒販店さんもいらっしゃいました。
そうして生まれたのが「美丈夫」です。今から約20年前のことです。

生産量は追わず、手作りで、何よりも酒質を追い求めてきた酒です。挫折も、失敗も、思うようにいかないことも多々ありました。ただ「うまい酒」のために、今も走り続けています。

※美丈夫の味わいは酸に特徴があります。それは土佐の食文化と非常に関係があります。土佐には昔から柑橘を食事に使う習慣がありました。それは温かな土地であることから食中毒の危険が高くそれを防ぐ為、柑橘のしぼり汁を掛け回していたそうです。柑橘の酸味に負けない酒が求められ自然と酸が程良く効いた酒が発達したのです。
酸が効いた酒というと「酸っぱい」イメージではなく例えば天婦羅などの油物を食べながら美丈夫を飲むと口の中の油が綺麗に洗い流されます。そしてまた、次の料理がおいしく頂けるのです。
美丈夫は食中酒としてのポテンシャルは素晴らしいものです。こんな酒がこの世にあることに感謝したいと思います。何んと幸せなことか・・・