新潟県での栽培に適した画期的な大吟醸酒用の酒米新品種
酒米の最高峰は「山田錦」と言われています。
大粒にして心白(中心部が白い、デンプンが集まっている)が多く、大吟醸等の高級酒造りで精米する際、50%以上白い、40%~35%しか米の残らない精米に耐えうる米として定評があり、出来る酒に膨らみのある味が特徴として酒造適性に優れています。しかしそもそも南方の品種で、兵庫や岡山が主産地で、北陸以北の栽培には適しませんでした。収量が少なくなる上、栽培期間が長くなり、丈が長く倒伏しやすく、病気や風の被害の危険も多くなります。そのため、新潟県内での大吟醸酒等、高級酒の醸造は他県産の酒米を使って仕込むという状況にありました。
これまで新潟県での酒米の生産は「五百万石」を中心に栽培されてきましたが、「五百万石」は、スッキリとした味が特徴で「淡麗」と言われる新潟清酒の産地形成に大きく貢献してきましたものの、精米歩合を高度に白くすると、胴割れが起きてしまい、精米歩合40%~35%の真価が得られず、大吟醸酒の醸造には不向きとされてきました。
新潟県の酒造業界では、長年、原料米、水、技術の全てを新潟県産で完結させることができる酒米新品種の育成を悲願としてきましたが、そこで登場したのが大吟醸酒醸造用の酒米、「越淡麗」と言うわけです。
「越淡麗」は平成16年に新潟県農業総合研究所作物センター、新潟県醸造試験場、そして新潟県酒造組合が共同研究し、共同事業として開発された酒造好適米です。
酒造特性にとことんこだわった選抜を行った結果、15年におよぶ試験研究を経て、「山田錦」を母、「五百万石」を父とする交配組み合わせの中から、両者の長所を併せ持つ画期的な酒米新品種「越淡麗」が生まれました。「山田錦」以上の酒造特性、「コシヒカリ」の後に収穫できる晩生の熟期、「コシヒカリ」並みの栽培特性、従来の酒米に比べて高度の精米耐性、玄米タンパク質含有率が低い、という優れた特徴があります。お米の粒が大きく、精米しやすいのも特徴的です。その上、吸収力が高く、醪に溶けやすく、麹菌が住み着きやすいのが特徴です。そのため、日本酒造りをしやすい酒米と言えます。しかし優れた酒造特性と同時に、倒伏しやすい、穂発芽しやすい、また「いもち病」にかかりやすい等、管理の難しさも持ち合わせており、生産農家は、高品質で安定した「越淡麗」生産のために更なる栽培技術の向上に努めています。
越淡麗を使って醸した日本酒の味は、口当たりがまろやかでふくらみがありつつも、淡麗ですっきりとした味わいがあります。山田錦とは違う味わいが生み出せます。
これにより新潟県産米を100%使った完全オリジナル大吟醸酒・純米大吟醸酒の製造が可能になったと、酒造業界からも熱い期待が注がれています。