令和元年9月14日(土) 予てからご紹介したかった松乃井酒造場をたっぷり味わって頂く日本酒勉強会を行いました。
当日のレポートを記します。
当日の参加者は20名。当店、日本酒勉強会《翁乃会》13名、日本酒塾塾生7名の日本酒大好きな方々ばかり。
以前より、新潟県は『地酒王国』と言われるように、淡麗辛口で世の中を席巻しました。全国区でも久保田や八海山などの銘柄が人気を博しています。県を上げて酵母や酒米の研究開発に取り組んできた結果、酒質の向上が顕著で日本酒を取り扱う酒販店、飲食店での評判がとても高い。
たか田と松乃井とのお付き合いは15年ほど前のある夜、カウンターに出張で東芝府中工場に来られた一人の男性がお座りになり、お酒を飲みながらお話をしました。「実は私の父親が十日町の小さな酒蔵、松乃井酒造場で蔵人ととして酒を造っていまして・・・結構、綺麗で旨味のある酒なんですよ。」その頃、たか田の酒の品揃えに漠然とどうしたら良いかと思案中でした。こんなグットタイミングは無いと「是非、松乃井をご紹介ください」とお願いし、お父様経由で蔵元に取り次いで頂きました。蔵人からの話と言う事もあり快諾を頂き、お酒を直送して頂きました。初めて飲んだ松乃井 吟醸生酒は、程良い吟醸香にツルツルと喉を滑って行く心地よい飲み口と後口の良さ、特別本醸造は軽く、上品で、食中にぴったり。全く既存の新潟酒とは違う一つ上を行く酒質に感激しました。5年間ほど取扱いご愛飲頂いていました。その当時のお客様で、松乃井がことのほか気に入って頂き毎回ご愛飲頂いた方もいた程です。
その後、たか田の取り扱い酒の増加に伴い、メニューから外れておりました。
今夏前から松乃井蔵元と連絡を取り、再度の取り扱いをさせて頂けることになりました。
先日(R1/8/19)、十日町まで車を飛ばし松乃井酒造場の蔵元 常務取締役兼杜氏の古澤 裕氏、奥様の布美子さんにお会いしました。
十日町市は新潟県南部にあり、町の中央を信濃川が流れ、雄大な河岸段丘が形成されています。この土地は縄文時代以前から人が住みついたところで、昔から交通の要所、現在はほくほく線と飯山線が交わる町となっています。又、特A魚沼産コシヒカリの産地として広く稲作がされるだけではなく、京都・西陣と並ぶ紬織りの一大産地だったそうです。
魚沼コシヒカリで知られる豪雪地にある松乃井は、環境と人の手を酒造りの芯と考える蔵元。恵まれた自然環境の清冽な雪解け水を用い、手作業で美酒を醸し続けています。地酒ブーム時に東京の百貨店の問合わせに対し、地元重視の姿勢を貫き、今でも生産量の七割以上が地元消費されています。本当の意味での地酒ですが、近年、鑑評会金賞など評価も高い。
日本酒大国の新潟県。
その中にあって、松乃井はきれいな酒質、程よい吟香、米の旨味を引き出し、後切れも良い。
ツルツルと飲める美味し酒。この上なく極上の一滴を醸している。
蔵元兼杜氏の古澤 裕氏、年間通して多忙な中この日の予定を入れてくださり、蔵の見学、9月の日本酒勉強会でご紹介する酒の打ち合わせ等、たか田酒の会の為にお時間を作ってお越し頂きました。
当日、18時には沢山のお客様のご来店と共に会を始めました。
杜氏の見立てで送られて来た酒は5酒。
今回の蔵元セレクション
- 英 保 純米大吟醸 越淡麗 35%
- 松乃井 純米吟醸 山田錦 50%
- 松乃井 吟醸 生 越淡麗/こしいぶき 50%
- 松乃井 スーパー本醸造 五百万石/こしいぶき 58%
- 松乃井 地元酒 普通酒 五百万石/こしいぶき 65%
- 松乃井 仕込み水
番外酒
- 松乃井 特別純米 たかね錦 55%
今回の最大のテーマは《ツルツルと喉を滑る味わいの発見》
杜氏から聞きました話をコンパクトにまとめて私がお話ししました。
用意したプリントは10枚、我ながらかなりの力の入れようですね。
松乃井の味わいを決めている赤松林の横井戸からコンコンと湧き出る《仕込み水》がもたらす優しく透明感を感じクリアな味わい。新潟県開発の越淡麗の話や蔵人の田んぼで作られる米の話、豪雪地ならではの酒造りの苦労話、杜氏のこだわり、など多岐にわたりお話しました。
特に全生産量の半数以上が地元酒、そして全出荷量の7割が地元へ、これぞ地酒と呼べる本物の酒です。
杜氏は「レギュラー(普通酒)こそうちの酒」というように十日町のあちらこちらに松乃井の看板を上げている飲食店が多数ありました。地元の人はこんなに美味い地元酒を毎晩飲めるなんて幸せだなと痛感します。私が今まで飲んだ普通酒の中でもトップクラスの味わいと自信を持ってお勧めし出来る清酒松乃井(普通酒の正式名)。
今回用意の酒のそれぞれの印象
- 英 保 純米大吟醸 越淡麗 35%・・穏やかで柔らかくしなやか、和三盆糖、味わい広がり、酸の切れ
- 松乃井 純米吟醸 山田錦 50%・・吟香よし、旨味、甘み、味幅伸びる、切れ良し
- 松乃井 吟醸 生 越淡麗/こしいぶき 50%・・吟香立つ、軽さ、旨味伸びる、アル添感無し、切れ良し
- 松乃井 スーパー本醸造 五百万石/こしいぶき 58%・・吟香澄んで立つ、甘酸良し、クリア、切れ良し
- 松乃井 普通酒 五百万石/こしいぶき 65%・・裾野の広がり、旨味と切れ、飲み飽き無し、極上酒
基本に忠実な酒造り、息の合ったチーム松乃井の六人衆、極寒の清冽な環境、杜氏のこだわりなど、挙げれば限の無いほどの真面目な酒造り。 本当に良い酒を醸されています。
松乃井酒造場は明治27年(1894)創業、5代続く蔵です。
ご兄弟(兄が社長、弟が杜氏)と季節雇用の蔵人5人で醸しています。
基本にならった酒造りのほかに、チーム松乃井ならではのユニークな酒があります。『スーパー本醸造』。この酒は特別本醸造でありながら「どこまで大吟醸に迫る酒質を再現できるか」という蔵人の遊び心から生まれた酒です。大吟醸用の香りの出る酵母を使い洗練された飲み口と後切れの良さ、丁寧な造りが極上の一滴を醸している。
飲まれた皆さんも「こんな本醸造飲んだ事が無い!コスパ最高!」との声多数。
用意した酒達を手際よく出しつつ酒にまつわる話をしつつ、たか田の料理を食べて頂きました。
たか田酒の会 特別コース料理
- 松乃井謹製白瓜粕漬け、茄子のからし漬け、酒粕チーズクラッカーのせ
- 刺身《静岡産 戻りかつおタタキ たか田謹製》
- アラスカ産紅鮭 粕漬け
- 焼き茄子、冬瓜 蟹と黄菊の旨煮餡かけ
- 合鴨白髪ねぎ水菜 サラダ
- 冷やしタラコパスタ
賑やかに、しかし確りと私の話に耳を傾けて頂けるのがたか田酒の会『翁乃会』の真骨頂。今回、初めて日本酒勉強会に参加頂く方も有り、沢山の説明に皆さん納得の表情。酒にまつわる質問も飛び出しました。
用意した酒は冷酒でお飲み頂き、地元酒はぬる燗でもお試しいただきました。(このぬる燗が最高との声もありました)。また、以前に蔵から取り寄せた、特別純米も燗につけて味比べして頂きました。
3時間の会はあっと言う間に過ぎます。
お集まりの皆さん、ほろ酔いで松乃井の良さを体感頂けたことと思います。
今回も《酒は人なり》を感じました。杜氏の穏やかで自信に満ちた語り口、松乃井の旨さは人にあります。
仕込み水のクリアな口当たり、酒米の品質の良さ、上品な吟醸香、実直な蔵の仕事ぶり、どれをとっても美味い酒になる要素に富んでいます。地酒王国 新潟、その中でも松乃井の実力を今回の酒の会でも感じ取ることが出来ました。
いつも良い酒を有難うございます。
古澤杜氏並びに奥様、色々と有難うございました。
次回、個人的にも日本酒談義をさせ頂きたいと思います。
今後ともよろしくお願いいたします。